【完】さつきあめ
八方美人でどんなキャストにでもいい顔をするタイプの小林。
その小林でさえ、ゆいには困り果てているのは何となくわかる。キャストからの不平不満も、お客さんのクレームも、全部店長である彼にいくのだから。
「そこはさー、うまくやってよ、小林さん」
へらへらと笑い、小林の重そうにがくんと落とした肩を叩く。
元はと言えば、あんたにも原因があるんじゃないか、と悪態もつきたくなるものだ。
「原田さん!」
「おー、さくらと美優お疲れさんー」
でもこの男も悪びれなく笑っているのだから、相当なたまだと思う。
「更衣室でまた凛さんとゆいがもめてるよ?」
小林は更に肩をがくっと落とし、「またかよ~…」とついつい本音が漏れる。
その瞳は原田に助けを求めていたように見えるけど、「何とか頼むよー」と原田は再び小林の肩を叩きながら、そそくさと店を出て行こうとした。
…ほんとに、こいつ…。
「ちょっと!原田さん!あなたに原因があるんでしょう?!そりゃないですよ!」
THREEの責任者は原田だ。
でもお店で起こっている問題、しかも自分と関わりのある問題にさえこいつは背を向けようとした。小林の味方をするわけではないが、そりゃーないでしょうと言いたくもなる。
「いやぁー、それは凛とゆいの問題でしょ?」
「いやいや、あなたの事であの2人が嫌な雰囲気になってるんでしょう?
正直店の雰囲気も最悪だし、何とかしてほしいんですけど…」