【完】さつきあめ
正直、原田が誰を好きでも関係ない。
色管理だろうが、趣味だろうが、誰と付き合おうが誰と寝ようが全く興味はない。
でも面倒な事から逃げ腰のこの人には嫌悪感しかわかないのだ。
きちんと管理出来ないのなら、女の子に手を出すべきではない。

それでもこの人は乾いた笑いを浮かべ、まるで関わりたくないといった感じでお店を出て行った。

お客さんとのアフター。
その日は飲んでも酔いはしなかった。
小一時間程度でお客さんと別れ、なんだかそのまま帰る気分にもなれなかった。

「どっか飲みに行こっかなぁ…」

ふと、光と一緒に帰っていた頃に光を待っていたバーのグラフに行こうかと思ったけど、すぐに足を止めた。
あそこは光が利用してる。
もしかしたら南という今の彼女と一緒にいるかもしれないし、南が1人であの場所で光を待ってるかもしれない。
偶然会ってしまったら、耐えきれる気がしない。
一瞬考えて、すぐやめようと思いなおす。

「綾乃ちゃんたちとよく飲みに行くバーに行くか…」

思い直して、いつも綾乃たちと仕事帰りに行っているバーに足を運ぶ。
そしてすぐに、この選択を後悔する事になる。

「げぇっ」

お店に入って、開口1番に出た言葉。
バーに入ってすぐ、カウンターに1人で飲む朝日の姿。
目が合うと悪戯に笑い、お店を出て行こうとするわたしの首根っこを掴んだ。
どうして光とは偶然でも会えないのに、この人に偶然会ってしまうのだろう。

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