【完】さつきあめ

風紀、なんて朝日に言ったところで無駄だろう。
だって自分自身も風紀してるわけだし、けれども原田の行為は目に余る。

「風紀はいけねぇけど」

「あんたが言うなって感じですけどね」

「別に原田は凜ともゆいとも付き合っちゃいねぇって言い張るしなぁ。俺にはなんとも出来ねぇわ」

「ですよねー…。あなたに言ったのが間違いでした…」

「それに俺風紀なんてしてませんけど?」

「はいはい」

「いやマジで、ゆりと別れたし」

思わず耳を疑った。
ゆりとは別れたし、と何事もなかったかのように言う。
目を大きく見開いて朝日を見つめたら、ぶはっと吹き出して笑う。

「だって俺、お前にゆりと別れるって言っただろう?」

それはつい数日前の事。
言われた本人さえ忘れていた事で、目の前の男はさも当然と言った感じで焼酎を一気に飲み込む。
確かに別れると言った、聞き流していた話。
わたしの前で適当な事を言って、絶対に別れないと思ってた。あのゆりが朝日とすんなり別れるとも考えずらかった。
その前に…冗談かと思ってた…。目の前に座って、軽薄に笑うこの男が、わたしにした約束を守ってくれるなんて…。

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