【完】さつきあめ
眠る朝日の顔を見て、その後にわたしとばちっと目が合う。
吊り上がった瞳が、垂れ下がったかと思うと、柔らかくわたしに微笑みをかける。
「宮沢さんじゃない。誰かと思えば」
わたしの顔を見て、その女性は低いトーンで言った。
知り合いか、はたまた朝日と関係してる女なのかと思った。
しゃがみこみ、再び朝日の顔を近づけ覗き込むと、ふっと小さく笑う。
「やだ、また飲みすぎ?
この人飲むとすぐ寝るくせに何でこんなに飲むんだろうね?」
ねっ?とわたしに同意を求めるように言って、また微笑んだ。
「1回寝ると、どんな事したって起きやしない」
朝日をよく知っているという口ぶりで、優雅な身のこなしで片方の腕で、朝日を支えるように起き上がらせた。
それに合わせて、わたしも立ち上がる。
「ほんとにどうしようもない人」
その華奢な女性は見た目よりもずっと力があって、2人でエレベーターの乗せる事に成功して、全てわかってる風に、朝日の部屋のある階のボタンを迷わずに押した。
綺麗目の水商売風の女性。朝日をよく知ってる風だったので、てっきり朝日の数多くのうちの女の1人だと思った。