【完】さつきあめ
「あら、七色の女の子なの?」
意外そうにその女性は目を丸くした。
「あの、あの、はい…そうなんです…ただの従業員と雇い主ってだけで…」
何を今日会ったばかりの人にこんな言い訳めいた事をしているのだろう。
その女性は再びわたしの顔を覗き込むように、凝視した。
「お店は?」
THREE、とわたしが言う前に「THREE?」と言った。
こくんと頷くと、あぁ!と声を上げた。
「元シーズンズにいて、THREEに移った?」
「あの…あたしの事」
「さくらちゃん!」
何で知ってるの?疑問を持ちながら頷くと、その女性はまるでパッと花が咲いたように華やかな笑顔を見せた。
「やっぱり!ゆりと宮沢さんが別れて、ここにいるとしたら、まさかとは思ったけれど…
あなたがさくらちゃんなの!」
「あの、あなたは」
再び花のような笑顔を作って「由真って言うの」と言った。
由真、聞いた事のある名前と思った。
数秒止まって、「あ!」と思い出した。
もしかして、この人は…。
「双葉の…由真さん?」
「そう。会いたかったの、初めまして、さくらちゃん」