【完】さつきあめ

「ねぇ。ちょっとうちに来ない?
この人はもう送り届けたんだから放っておいていいでしょ?」

「え、でもこのままじゃあ風邪ひいちゃうんじゃ…」

「あら、噂通り優しいのね。
でもこれくらいで風邪ひくたまでもないでしょーよー
それに風邪をひいても自業自得ね」

そう言って、わたしたちは朝日のマンションを出て、同じマンション内にあるという由真の部屋へ移動した。

たくさん聞きたい事があった。
双葉のママ、という事はこのグループも大分長いはずだ。
それにわたしが話す前にこの人は色々な事を知っていた。
きっと、朝日の恋人だったさくらさんの事も知っているだろう。

「すごっ!」

由真の家に入っての第一声。
言ってしまった後に思わず大声が出てしまった事に後悔して慌てて口を両手で塞ぐ。
そんなわたしの様子を見て、由真は声を上げて笑った。

「そこにでも座って、いま、お茶いれるから」

指さした先には、お店で見るような大きな白いソファー。
座ってみてまたびっくり。
全身が吸い込まれていくほど、柔らかい。
朝日の住むマンション。見た目からかなり立派なのはわかってたし、玄関まで入った事はある。でも中まで入った事はもちろんなく、まず通されたリビングの広さにびっくりした。1人暮らしの部屋じゃない。大きなテレビと大きなソファーに大理石で出来たテーブル。
食卓テーブルの先にある大きなキッチンで由真がお茶を入れる。

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