【完】さつきあめ
食卓テーブルは椅子が4つあって、でも誰かと一緒に暮らしているという生活感はこの家にはない。

リビングには3つほどドアがあり、その先にも部屋があるのだろう。
わたしが住んでるマンションだって普通の10代の女の子が住むには十分すぎるほど高級。でも朝日や由真が住むマンションは別格だった。

勝ち組。それはこの人たちの事を指すのだろう。

着物姿のまま、キッチンに立つ由真は居るだけで様になるような人で
ティーセットを持って来て、上品な立ち振る舞いで紅茶をカップに注ぐ。
そのカップ1つでいくらするんだろう、なんてぼんやり考えていた。

「どうぞ」

「あ、ありがとうございます。
すごい家ですね…。1人暮らしなんですか?」

「残念ながら、一緒に住んでくれる相手がいないの」

小さく微笑み、カップに口をつける。
絶対嘘だ。
こんな綺麗な人を放っておく男がいるものか。
着物姿も、綺麗にまとめられた髪も、上品な化粧も、こんなにこの家にいて絵になる人はいるのだろうか。
じっと見つめていると、由真の切れ長の目と目が合った。

女でもドキッとしてしまうほど、色気のある女性だ。

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