【完】さつきあめ
「でも、さくらの気持ちはさくらだけの物。
あたしたちにはわからないわ」

まるでわたしが考えている事を見抜くかのように由真が言った。

「でも当時の七色では色々な噂が立ってた。
さくらは弱みを握られて宮沢さんと付き合ってたんじゃないかって。だって本当に有明と仲が良かったから、誰も別れるなんて予想もつかなかった」

「…あたしもそう思ってます…」

「あたしはそうは思わないわ」

由真ははっきりと言い切った。

「あなたは…有明の事が好きで、有明の良いところばかり知ってる。
だから過去の話を聞けば有明にばかり感情移入する気持ちもわからなくはないのよ。

でもあなたは宮沢さんの事をちゃんと知ってる?」

由真が真っ直ぐとこちらへ瞳を向け言った。
わたしが知っている朝日は、威圧的で自分勝手で、自分の欲しい物のためなら手段を択ばない冷酷な男。
けれど、それだってわたしにとっては朝日の一部でしかないのかもしれない。
由真の言った。宮沢さんの事をちゃんと知ってる?という言葉に胸が痛かった。

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