【完】さつきあめ
ゆいは携帯を取り出し、いとも簡単に風間の連絡先を消去した。
そこには何の感情も含まれていなく、まるでごみをゴミ箱にぽいっと投げ捨てるように、いとも簡単にそれをなかったことにした。
七色グループに入って1年目の夏。
あのうだるような夏がまたやってくる。
諸星から聞いた風間の話と、気にも留めないようなゆいの態度
何かが起こる。嫌な風がまとわりついてくるような夏の夜だった。
「おはよう」
「あ、おはようございます」
凛の相変わらずのつんけんした態度は変わらない。
それでもわたしは彼女の仕事への真剣な取り組みは評価していた。
気が強いところはあるが、姉御肌。彼女を慕うキャストは少なくはない。
「さっき事務所に社長いたわよ」
「はぁ…」
「何か社長少し痩せたんじゃない?」
「あたしは会ってないからよくわからないです…」
光にはずっとずっと会ってない。
凛の口から光の話が出るなんて意外だ。
凜は鏡に向かって、唇にグロスをひいた。
「あたしね、THREE辞めようかなぁって思ってて、それを社長に相談しにいったんだけどね」
「え?!凛さんお店辞めちゃうんですか?!」
「うん、辞めようかなって、あんたが来る前からずっと辞めよう辞めようとは思ってたんだけどね。うちのお店は大樹が担当だから、本来なら辞める相談も大樹にしなきゃいけないんだけど、大樹に相談したら…わたし…決心が鈍っちゃうっていうかね、小林に言ったって頼りになんかなんないし、だから社長に相談しにいったの…」