【完】さつきあめ

「凛さんは頑張ってたよ?」

「頑張ってたって、ナンバー1になれないんだったら落ち目なんだよ。
おばさんのくせにその事実も認めないで、若い男に騙されて張り切っちゃって、馬鹿みたい」

「好きな人のために頑張る事の、どこが馬鹿みたいなの?」

わたしが言うと、大きく目を見開いて、ゆいの苛立ちが感じてきた。
でもすぐに小さく笑って、わたしをまるで馬鹿にするように笑いかけた。

「そっかぁ、さくらは凛さんの気持ちがわかるもんね」

名前は出さなかったけど、ゆいが光の事を言いたいのはわかった。

「でも馬鹿みたいだよ、さくらも。
光くんの事が好きで、光くんのために仕事を頑張るなんて、結局光くんに利用されてるだけじゃない。
光くんには彼女もいるし、それにあの人はさくらが思ってるような人じゃないよ?」

「ゆいも光とヤってるもんね」

ゆいが自分で言う前に口に出す。
どれだけ惨めな気持ちだろう。 ゆいの事は嫌いじゃない。でも仕事面に関しては、ゆいより凛の方がわたしにはずっと尊敬出来た。
そこにどんな理由があろうとも、頑張ってる人間を馬鹿にするような発言は好きにはなれない。

ニヤっと、可笑しそうに笑う。

「知ってたんだー」

この子は、自分が何を言ったら、人が傷つくなんて考えちゃいない。


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