【完】さつきあめ

「光くんもー、さくらが思う程真面目な男じゃないし、大した男でもないよー。
夜の男なんてしょせんその程度だってー。凜さんもさくらもそんな男に利用されて本当に可哀そうー。男のためにあたふたして動いちゃって、こっちから見たらおかしくて仕方がなかったー」

「光をどう思うかなんて自分の意志で決める。
凛さんも馬鹿みたいじゃないよ。そうやって人の事馬鹿にして、本当に人の事愛する気持ちも知らないゆいの方が馬鹿みたいだわ…」

いつも笑ってたゆいが顔をしかめた。
わたしの言葉にイラついている証拠だ。
顔を歪めて、また口元をあげ笑って、わたしの前へ来て、指先で首筋を舐めるように上下に移動させた。

「そうかぁー、さくらは男も知らないもんね。
あたしが教えてあげようかー?光くんがどうやって女を抱いて、どうやってあたしに触ったか…」

ゆいの指先が更にわたしの体に伸びる。

「やめて!」

反射的にゆいの手を強く振り払った。
ゆいは一瞬目を大きく見開き驚いて、次の瞬間振り払われた手を押さえながら、わたしを強く睨んだ。
ゆいがあんな風に顔を歪めたのも、こんな風に怒りを露わにするのは初めてだった。
奇しくも、いつも笑ってばかりいるゆいの人間らしいところが初めて見えた瞬間でもあったのだ。

「ゆいは間違ってるよ…
確かにゆいはお客さんもいっぱいいるし、人気があるかもしれない…。
あたしはゆいの事好きだけど、ゆいの他人へ対する態度とか、そうやって頑張ってる人を見下したり、馬鹿にするところ…嫌い…」

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