【完】さつきあめ
人に嫌いとはっきりと言うのはいつぶりだっただろうか。
でもゆいを友達だと思ってるからこそ、ゆいと仲がいいからこそ、言わずにはいられなかった。

「ほんっと、さくらってバッカみたい」

わたしを睨みつけ、吐き捨てるように言う。
ゆいの瞳に、憎しみが滲んでいる。
凛と言い合いをしていたって、他の女の子から悪く言われたって、ゆいはこんな顔をした事がなかった。ゆいはいつも余裕で、笑っていたから。

「愛とか、恋とか、馬鹿みたいって言ってんの。
結局自分の望むもの何一つ手に入れられてないくせに!
THREEのナンバー1になってれば光くんがいつか振り向いてくれると思った?そうやって健気ぶって、痛いんだよ!大体1番でいられるのだってあたしが本気出してないからじゃん!お情けのナンバー1のくせに笑えるわ!」

「なら本気出してみなよ!」

「っ!!」

「ナンバー1になるのが簡単なら、少しはやる気出してみなさいよ!本気出せばあたしなんかすぐに抜かせるんでしょ?!ならやってみろって言ってるの!いっつも本気出してないとか予防線張って、本気出した時に1番になれなかったらって考えたら怖いんじゃないの?!」

ゆいの顔が見る見るうちに赤くなっていく。
握りしめた拳が、震えている。
でもいつかゆいとこうなってしまうんじゃないかって予感してた。
わたしは口には出さなかったけど、ゆいと光の間にあった事も知ってたし、もしかしたらゆいはそれでもわたしが光を好きでいるのを影で笑っていたのかもしれない。
それでもTHREEで出来た初めての友達だったし、屈託のない笑顔を見せて、わたしに懐いてくるゆいが好きだった…。

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