【完】さつきあめ
「風間社長は?」
「あぁ相変わらず。昨日も来てて、鬼のようにシャンパン開けてたけれど」
「本当に大丈夫なのかなー…」
諸星はいつもお店に来たら、風間の話をしていた。
きっと心配しているのだろう。
そう思えば、この人はなんて優しい人なんだろう。
「諸星さんって本当に優しいですよね」
「えぇ?!さくらちゃんの方がやさしーでしょ?」
「風間社長のこと自分のように心配しちゃったり、大した好きでもないシャンパンわたしの為に頼んでくれたり」
「いやー別に普通でしょー。でもそうやってさくらちゃんが俺の事見ててくれて、考えてくれてるところは嬉しいなー…。心がほっこりするよ…」
お客さんは見ていないようで、わたしたちの心をしっかりと見ているわ。凛が言っていた言葉だ。わたしもそう思う。
だからこそ一緒にいる時間で、落としたお金の価値に見合う時間を出来る限り作っていくのがわたしたちの仕事なのだと思う。
ゆいはにこにこ笑っているけど、お客さんの事をきちんと見た日はあるのだろうか。
それでも今日だけで見ればゆいの売り上げはわたしより圧倒的に勝っていて、THREEに来てた原田はまるでゆいのご機嫌を伺うように、ゆいの頭を撫でていた。
「ゆい最近すごいじゃーん!元からすげぇとは思ってたけど~」
「へへ~本気出せばこのくらいよゆーですっ!」
「今月さくらに勝っちゃうんじゃないの~?本当にゆいはすごいよ~」
原田がわざとわたしに聞こえるように言ってくる。
元々いけすかない男だとは思っていたけど、最近はさらにうざったい事この上ない。