【完】さつきあめ

「原田さんこそ、社長と全然違うんですね」

社長、と言葉に出せば、原田の表情が一瞬曇る。

「社長はお店にいる女の子を誰か1人特別に扱ったりしなかったわ。
曲がりなりにもこのお店の担当であるのならば、自分が担当しているお店の女の子の事は1人1人きちんと見ていてくださいね」

原田に睨みつけられる。
いつもへらへらとしていた原田が、怒るとこんな顔をするんだな、ってぼんやり考えていた。

「ご心配なく。
俺はTHREEや双葉をそのうちONE以上のお店にしてみせるから。

その為には君の力なんかいらない。
なっ!」

そう言うと、ゆいの肩を握った。
肩を握られたゆいは、何ともいえない顔で、無言のまま原田に微笑みかける。

「どーでもいーよぉ、あたしがさくらに負けるわけないんだから。それより原田さん今日は一緒に帰ろうね~」

「はいはい、どっか飯でも食いに行こうか」

2人は肩を寄せ合い、お店から出ていく。
風紀を隠す気はまるでゼロ。
2人の背中を睨みつけるわたしの肩を、凛がぽんと軽く叩く。

「子供みたいよね…」

「凛さん…」

「原田にはわたしから別れを告げたの。
何とも思ってない女でもプライドが高い男だから相当悔しかったでしょうね。
だからああやってゆいとの仲を見せつけるようにしたいんだわ。
まぁ、あんな子供みたいな男を本気で好きだったあたしも相当痛い女ね」

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