【完】さつきあめ
「涼……とりあえず、あれお願い…」

空気に耐え切れず、涼に頼んでいたケーキを出してもらう事にする。
ケーキを取りにいった涼がいなくなると、朝日の涼への悪口のオンパレードが始まってしまった。

「お前は本当に趣味が悪いな」

「…だから涼とあたしはそんな関係じゃないって…」

「ああいう見た目ちゃらそうな男は好きじゃねぇな…」

…あんたが言うか。
涼より朝日の方がよっぽどちゃらそうだ。

「涼はいい子ですよ」

「あの男は女なら誰でもいいってタイプだぞ?!お前やっぱり騙されてるんじゃないか?!」

「騙されてるって…!宮沢さんいい加減にしてください、怒りますよ」

まだぶつぶつ言っていたが、きつく言うと朝日はようやく黙った。
その時ケーキに火をつけた涼が席に戻ってきた。

特注で注文した、立体的なパンダの形をしたバースデーケーキ。
チョコレートで出来たプレートには、あさひくんたんじょうびおめでとう、と全部平仮名で書かれている。
涼が用意してくれたのだろうか、ケーキの上のロウソクが花火みたいにぱちぱちと火花を立てている。
子供じゃあるまいし、馬鹿じゃねぇの、と、きっとこのケーキを見たら朝日は悪態をついてくると予想していた。

私たちは、2人で声を合わせてハッピーバースデーを一緒に歌う。
歌い終わったら、朝日は予想を反した反応を見せた。

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