【完】さつきあめ
「光…あたしは七色を辞めない」
そう言った瞬間、その冷たさが増した気がした。
生ぬるい風が2人の間をすり抜けていく。
光の熱い体温を持つ腕が、わたしの腕を力強く握りしめる。
それは朝日と同じ体温だった。
握りしめたかと思えば、強引に引っ張っていく。
「光、痛いよ!!」
痛いと嘆いても光の力が弱くなる事はなかった。
わたしを寝室まで無理やり連れて行って、押し付けるようにベッドに倒される。
こんなに怖い顔をしている光は初めて見た。
「ひかる…?」
そのままベッドに押し倒して、無理やりキスを落としてきた。
無理やり押さえつけられた肩がひりひりと痛んだ。 でももっと痛かったのは心だ。
わたしの知っている光は、わたしが嫌がるような事を無理やりするように人じゃない。
それでも光の手は止められる事はなく、わたしの服を無理やり脱がせていく。
「光…やめて…」
ぴたりと光の手は止まり、わたしの顔へと視線を落とす。
僅かな隙間から入ってくる光りに照らされて見えたその顔は、やはりわたしの知っている光じゃない。
大好きだった人が、今はこんなにも怖く感じるなんて。
「お前も結局裏切るのか…」
消えそうな声で呟いた、光の視線。本当にわたしを見ていた?
虚ろになっていくその視線が、わたしを通り越した誰かを見ている。