【完】さつきあめ
髪に手が触れたらわずかに体を動かして、そして静かに目が開いていく。
「あぁ」
酷く疲れているようにも見えた。
「お前も飲むか?」
無表情のまま、わたしに向かって放った言葉は何の意味も持ってなかったと思う。
「うん…」
隣に座っても、びしょ濡れのわたしへ何の疑問を持たず、使われていないグラスに氷を1個1個入れていく。
朝日はいつでも優しかった。
それは見えやすい優しさとはほど遠い物ではあったけれど、たとえばわたしがびしょ濡れで目の前で現れたら、怒り口調でも何があった?と心配してくれるような。
朝日が作ってくれた緑茶割りを口に運ぶ。
暫く無言の時間が続く。
生暖かい暖房がお店を包み込んで、濡れていた髪は暫く立って乾いてしまった。
どうしてここに来たのか、誰に会いにきたのか、何を伝えにきたのか
何ひとつ伝えきる事も出来ないまま。
怒っていても、笑っていても、わたしへ向けてくれた感情たちが、今は何ひとつ感じられない空間で
人々の喧騒に囲まれて、私たちはふたりぼっちだった。
「待っていたんだ…」
重い空気の中、朝日がやっと口を開く。
「待っていた?」
「お前が、あいつを…光をいつも待っていたように
俺もここでお前に会える事だけを待ってた…。
でも、何かそんなの疲れて…」
「待ってなくて…いい…」
「あぁ」
酷く疲れているようにも見えた。
「お前も飲むか?」
無表情のまま、わたしに向かって放った言葉は何の意味も持ってなかったと思う。
「うん…」
隣に座っても、びしょ濡れのわたしへ何の疑問を持たず、使われていないグラスに氷を1個1個入れていく。
朝日はいつでも優しかった。
それは見えやすい優しさとはほど遠い物ではあったけれど、たとえばわたしがびしょ濡れで目の前で現れたら、怒り口調でも何があった?と心配してくれるような。
朝日が作ってくれた緑茶割りを口に運ぶ。
暫く無言の時間が続く。
生暖かい暖房がお店を包み込んで、濡れていた髪は暫く立って乾いてしまった。
どうしてここに来たのか、誰に会いにきたのか、何を伝えにきたのか
何ひとつ伝えきる事も出来ないまま。
怒っていても、笑っていても、わたしへ向けてくれた感情たちが、今は何ひとつ感じられない空間で
人々の喧騒に囲まれて、私たちはふたりぼっちだった。
「待っていたんだ…」
重い空気の中、朝日がやっと口を開く。
「待っていた?」
「お前が、あいつを…光をいつも待っていたように
俺もここでお前に会える事だけを待ってた…。
でも、何かそんなの疲れて…」
「待ってなくて…いい…」