【完】さつきあめ

「だいじょうぶですか?」

「だいじょうぶだよ。酔っぱらってるけど、歩けないほどじゃねぇよ」

それでも足取りはフラフラで、倒れそうになっている朝日を支えるために駆け寄った。

「だいじょうぶじゃないじゃん!掴まってください!送るから」

はぁーと朝日の大きなため息。
泣きそうな顔でわたしを見つめる。
何も言わずにただ、罵倒もしなければ、無言のまま、だからなおさら不安になるんだ。

朝日を支えて、玄関の前まで着いても朝日の顔は冴えないままだった。

「ほんと無茶な飲み方ばっかりしてたら早死しますよ?!
ベッドまで歩けますか?!ちゃんと寝ないと風邪ひきますよ?!」

「あぁ…」

リビングの電気を点けて、寝室の扉を開ける。
ベッドの横には脱ぎ散らかしたシャツやネクタイが散乱していた。
ざあざあと雨音はまだ止まない。静かな部屋に雨音だけが響いていた。

暗闇の中で、リビングの光りだけが僅かに真っ暗な部屋を照らす。

「じゃあ、あたしはここで…ちゃんと寝てくださいよ」

部屋を出て行こうとした時だった。

「っ!!!」

今までにないくらい強い力で、後ろから抱きしめられた。

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