【完】さつきあめ
シーズンズは…実に女の子同士の争いが少ないお店だった。
あんなにいがみあっていたはるなともあっという間に仲良くなれたのは、シーズンズにいたから。働きやすいお店、というのは間違いがない。けれどもそれが深海が悩ませていた売り上げ低迷の理由のひとつでもあった。

皮肉なことに深海が女の子同士働きやすい環境にすればするほどシーズンズは3流店扱いされ、仕事の出来ない店長と影で言われてしまうのだ。
上に上がりたい願望とか特にないから、と彼は口癖のようにいっていたけれど…。


はるなが待機で携帯とにらめっこしていた。小さなため息が漏れる。


「ONEや双葉の子はどうしてこんなに売り上げがあげれるんだろう…」

見せられた携帯画面にはバックヤードに貼られていた全店舗の売上表が映されていた。
先月の売り上げ、うちのお店ははるなが1番。綾乃が2番。わたしが3番だった。
入って一か月でナンバー3に入れたことを深海は素直にすごいなと褒めてくれたが、こうやって全店舗の売り上げで順位がつけられると下の方で、上の方はONEと双葉の女の子が占めていた。うちのグループ内では敷居低めなTHREEでさえ上位に食い込んでる子は沢山いる。全店舗のナンバー1は相変わらずあの人だった。

同じ指名客小笠原を持っている。小笠原は週に3回は来てくれて同伴もしてくれ、接待で使う日は大量の枝客を連れてきてくれた。それでもわたしとONEのナンバー1の差は雲を掴むほど遠かった。

「はるなちゃん…本当に深海さんが好きなのね…」

「なっ!!」

深海が店長として評価が高くないこと。それを知って頭を悩ませるなんてなんて一途な女の子なのだろう。

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