何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
前髪の隙間から、好奇心旺盛そうに光る大きな瞳に、図らずも堕ちてしまう女子が多いとか。
何故かこの人だけは、私に対してビビらずに他のクラスメイトと同じように接してくるのだった。
ぶっちゃけると彼ってあまり悩みがなさそうに見えるから、何も考えずに私に話しかけている可能性が高いけど。
「……お、おはよ」
私は目も合わさず、おどおどして言う。こんなキラキラ男子に、どんな顔をして接すればいいのか、分からなかった。
「あ、ねー。古文の訳、やってくるの忘れちゃった。折原さんやってきてるんなら、見せてくれないかなー」
私の緊張した態度を気にした様子もなく、人懐っこい様子で言う。ーーこんなの、少し嬉しくなってしまう。
「宿題は……じ、自分でやらなきゃ」
だけど、そんな思いとは裏腹に正論を言ってしまう。ーーあー、何やってんだろ、私。
「真面目だなあ、折原さんは」
しかし特に気分を害した様子もなく、中井くんは軽い口調で言った。
本当に、どうして私みたいな爪弾きものに構うんだろ、この人。
そしてホームルーム後の古典の授業になると、中井くんは開始後分程度で机に突っ伏して、寝てしまった。