何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
するとあわあわしながらも彼が答える。

中井くんをいじめたかったらしい先生は、予想に反して正解を答えてしまったことに、苦虫を噛み潰したような顔をした。

しかし「ーー正解だ」と短く言うと、板書しながら次の箇所の解説を始める。

中井くんは安堵したかのように席に座る。私は何事も無かったかのように、板書の内容をノートに写し出した。

ーーすると。


「ありがとう、折原さん」


隣からそんなことを言われた。心から感謝しているような声に聞こえた。


「ーーべ、別に」


彼の方は見ずに、照れ隠しするために愛想もなく私は言う。ーーどうしてこんな言い方をしてしまうんだろ、もう。


「折原さんって優しいよね」


そして中井くんは、驚くべきことを言った。

ただちょっと答えを見せただけで。それに愛想よく話せない私が、優しい?

どんな反応をしていいか分からず、私は聞こえないふりをした。

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