何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
これって、膝枕っていうやつじゃん……。いきなりそんなレベルの高いことを要求されても、どう反応していいかわからない。

まあ、私が反応する前に、悠はそれを実行してしまったのだけれど。

もちろん、嫌ではないけれど。むしろ、私の膝の上で安心しきっている悠の表情を見ると、嬉しささえ覚えるけれど。

だけど、屋上にいる人達にちらちら見られて、少し恥ずかしい。いくら顔見知りじゃないとはいえ。


「あー、やっぱりねむー。ごめん、本当に寝るね」

「え、あー……うん」


悠がだるそうにそう言うので、私はもう了承することしかできなかった。

そしてその後すぐに、悠が規則正しい寝息を立て始める。本当に眠りに入ってしまったらしい。よくこんなところで寝れるなあと、私は感心してしまう。

ーーそれにしても。

まつげ長いなあ。肌も綺麗で、シミ1つない。黒い髪の毛だって、艶やかでサラサラとしている。一つ一つのパーツが、大抵の女子でも太刀打ちできないほどに美しい。

悠は非の打ち所のない美少年だ。彼の寝顔を見て、改めてそう思わされる。

しかし、私には少し心配なことがあった。そしてその心配事は、たった今の悠の行動でさらに深みを増した。
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