何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
*悠side


桜と一緒に下校し、自宅に到着すると玄関に見慣れない靴が2足あった。

大人の女性物らしきパンプスと、ティーンの女の子が履いているようなデザインの可愛らしいサンダル。俺は誰がお客さんなのかを、それだけで察した。


「ただいま」


リビングに入りながらそう言うと、お客さんのうちのティーンの方が、俺の顔を見て瞳を輝かせる。


「おかえりなさい! 悠」


そしてパタパタと駆け足で俺に近寄り、今にも抱きついてきそうなくらいの至近距離で、可愛らしく言う。

思った通り、来客は隣の市に住む叔母さんと、従姉妹の美香だった。

それなりに近いところに住んでいることもあって、幼少の頃からよく一緒に遊んだ。

リビングにいたのは、母さんと叔母さんと、美香の三人だった。弟の奏の姿はない。いつものように友人宅にでも遊びに行っているのだろう。


「あらー、相変わらず美香ちゃんは悠が好きねえ」


叔母さんと一緒にダイニングテーブルについて紅茶をすすっている母さんが、茶化すように言う。

そして叔母さんも、微笑ましそうに俺たちを見ていた。


「だって夏休み、ちょっとしか会えなかったんだもん。いつもはもっと長い期間、うちに泊まってくれるのにさあ」
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