何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
可愛らしく美香は口を尖らせる。俺は苦笑を浮かべた。

同い年の美香は、物心着いた頃から何故か俺の事が好きらしい。

天然の巻き毛を高い位置でツインテールにし、長いまつ毛と大きく黒目がちの瞳は、まるでお人形のように愛らしい。

特に彼女や好きな人がいなかった俺にとって、こんなかわいい従姉妹からの好意に悪い気なんてしなかった。

でも彼女に対して恋心を抱いているわけではなかったので、今までは曖昧な対応でなんとなくやり過ごしていたのだった。

ーーそう、今までは。

現在は今までとは違うのだ。俺には桜がいるのだから。

美香には、早いうちにちゃんとそのことを伝えなきゃいけない。期待させては、かわいそうだ。


「あ、そうそう! この前言ってたバッグ、あんたにあげるわー」

「え、ほんと!? お姉ちゃんありがとう」


俺がそんなことを考えていると、母さんが自分の妹である叔母さんに、そんな提案をした。叔母は嬉々とした面持ちになる。


「他にもあげられそうなものあるから、寝室のクローゼット見に行きましょうよ」

「やったー! ラッキー」


そして2人はそんな会話をしながら、リビングから出て行ってしまった。
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