何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
リビングに、美香と2人取り残される俺。先ほどの決意を、実行に移すタイミングが思いの外早くきてしまって、俺は緊張する。


「ねえねえ、悠。今度2人で遊びに行こうよー!
最近デート、してないじゃんか」


もちろんそんな俺の思惑なんて知る由もない美香は、うきうきとした表情で俺にそう尋ねてきた。

デート、か。少し前までは美香に誘われて流されるまま、二人で一緒に出かけたものだ。

素直に俺に甘えてくる美香は、妹のように可愛くて、彼女と出かけるのはそれなりに楽しかったと思う。

だけどもう俺は、美香とデートには行けない。

美香だけじゃない。他の女の子とも。ーー桜以外の、誰とも。

いまだにリビングの入口に立っていた俺は、その前を立ち塞がる美香をすり抜けるように歩き、ソファへと腰を下ろした。


「ーー悠?」


美香の声に不安げな気配が混じる。いつもと違う俺の態度に、不審さを感じたようだった。


「俺はもう美香と2人では遊べないよ」


慌てた様子で俺の隣に座ってきた美香の方は見ずに、俺ははっきりとそう告げた。


「ど、どうして……!?」


激しく動揺しているような美香の声。ずっと慕ってくれていた従姉妹を突き放すのは心が痛む。

ーーだけど、ここで言わなければ。後々余計に美香を悲しませてしまうことになる。
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