何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
「彼女がいるんだ。だから、もう他の女の子とは二人では、遊ばない」


美香にとっては残酷な真実を、俺は端的に説明した。


「彼女!? 悠に!? そんなの、私聞いてないよ!」

「ーーごめん。夏休みに会った時に言おうと思ってたんだけど、2人で話す機会が無くて。……でも早めに言わなきゃって、思ってて」

「嫌だ! そんなの! 私嫌!」


怒りやら悲しみやらが入り交じっているような、美香の悲痛な声。

聞いていて辛いものがある。しかし、ここで俺が彼女に一時的に優しくしたところで、なんの意味もない。


「ーー美香」

「そんなの私認めないから! だって、私小さい頃から、もう10年以上も悠が好きなんだよ!? そんなちょっとの時間悠を好きになったくらいの女の子になんて、絶対負けないのに!」


だんだん涙声になりながら、美香は必死に俺への想いを主張する。俺はその顔を見ることは出来なかった。俯いて、自分の膝元を眺めていた。

美香の痛々しい表情を見たら、同情して優しいことを言ってしまいそうで。


「ごめん。ーー俺は今まで一度も、美香を異性として意識したことはない。妹みたいでかわいいなって、思ってはいたけど」


俯いたまま、淡々とそう告げると、美香はしばし無言になった。諦めてくれたのだろうか。俺は早々に肩の荷が降りた気分になった。
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