何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
そして悠は、はっきりと美香ちゃんにそう言った。ーー言ってくれた。

今まで、美香ちゃんが私を下げるようなことを言ってきたとしても、ピンと来ていない様子だった悠。

まあ、彼女は遠まわしにしか嫌味を言ってこなかったから、人のいい悠はなんにも気づいていなかっただけかもしれないけれど。

それでも、記憶を無くしてから初めて、美香ちゃんより私を思いやってくれた、悠。

嬉しくて幸せで。私のことを大好きだと、ずっと一緒にいようと言ってくれた時の悠が戻ってきてくれたような気さえして。

嬉し涙が出そうになってしまった。

ーーしかし。


「や、やだっ……! 悠が怒ったあっ……。うっ、えっ、えーん……」


美香ちゃんが勢いよく泣き出した。瞳からとめどなく涙があふれ出てきていて、ひたすら手で目元を拭っている。


「ーーあ、いや、美香。その……」


すると、先程までは美香ちゃんを睨みつけていた悠も、慌てたような様子になる。

まあ、いくら美香ちゃんの言動がひどかったとはいえ、泣かれてしまえばそれ以上責めることは、悠にはできないだろう。ーー彼がそんな男の子であることは、私もよく知っている。
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