何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
「な、なんでっ……! ひっく、怒るのぉ……? わ、私ゆ……うと、2人で、いたかった、だけ、ひっく、なのにぃ!」

「あー……ごめんな、美香。ちょい怒り過ぎたわ。な、ごめんって」


泣きじゃくる美香ちゃんを、悠は困った顔をして慰める。彼女は、ベッドで上半身だけ起こしている悠の膝に顔を押し付け、泣き続けた。


「ひど……いよぉ、悠……ひっく……」

「うんうん、わかったから。ごめん、もう泣くな」


悠が美香ちゃんの頭をポンポンと優しく叩く。ーーあまり見たくない光景だ。


「ーー悠。ごめん、私帰るね」


この場に居ることが辛くなってきて、私がそう言うと、悠は申し訳なさそうに苦笑を浮かべた。


「うん、なんかごめんね」

「ーーううん。じゃあ、またね」


私はぎこちなく微笑むと、踵を返して病室から出ようとした。ーーすると。


「……あの、折原さん」


そんな私の背中に、悠が呼びかけた。私は振り返る。

すると悠は持っていたタッパーの中から、卵焼きに刺さったピックを1つ摘みーー。

そのまま口の中に、放り込んだのだった。
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