何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
「悠……!」
「あ、これすげーうまいじゃん。いくらでもいけるやつだ。もらったの、全部食べちゃおっと」
ーーいくらでもいけるやつだ。
過去に学校の屋上でも、同じことを悠は言ってくれた。今と同じように、優しい頬笑みを浮かべて。
「ーーまた、来てね」
それは、彼が記憶をなくしてから、初めてかけてくれた言葉だった。
嬉しさが深い場所から湧き上がってきて、言葉が詰まりそうになる。
「う、うん。また、来るっ……!」
私が必死にそう言うと、悠はさらに笑みを濃く刻んだ。彼の膝の上には相変わらず美香ちゃんが突っ伏していたけれど、あまり気にならなかった。
それほどまでに、悠の笑顔は私にとって眩しかったのだ。
そして私が病室から出ると、ちょうど悠のお母さんと奏くんと鉢合わせた。彼女らもお見舞いに来たようだった。
「あら、こんにちは桜ちゃん」
「こ、こんにちは」
悠のお母さんは、私を見るなりぱっと笑顔になってくれた。
奏くんもはにかんだ微笑みを浮かべて、軽く私に会釈をしてくれる。2人と会うのは、悠が入院した次の日以来だ。