何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
絞り出すような声で言った悠は、涙を瞳の端に浮かべて、苦悶の表情を浮かべていた。
ーー私がいると、悠が苦しいの? 辛いの?
どうして? 昨日までは、あんなに歓迎してくれていたのに。
たとえ記憶が戻らなくても、うまくやっていけるかもしれないって思ったばっかりだったのに。
ーーどうして?
「ーーそうね。悠の記憶も戻らないし……。桜ちゃんは、あまりここに来ない方がいいのかもしれない」
今度は悠のお母さんが追い打ちをかける。ガラスケースの破片を集めて、私を悲しそうに見つめながら。
「おねーちゃんは……もう兄ちゃんのことを忘れた方がいいのかも」
そして、彼の弟の奏くんまでも。美香ちゃんが嘘をついていることを知っていて、私を信じてくれていた奏くん。この前は「がんばってね」って、笑顔で私を応援してくれたのに。
ーー悠も、彼のお母さんも、奏くんも。みんなどうしてしまったの? まるで昨日までと、別人みたいだ。
「うぅ……うっ……」
私は思わず、その場で涙を流し始めてしまった。泣くもんか、と思えば思うほど、涙がとめどなく溢れてくる。
「ーーもう、帰った方がいい。俺には何も出来ないよ」
しかし悠は、号泣する私に向かってにべもなく言い放つ。視界の端に見えた悠のお母さんと奏くんは、気の毒そうに私を見ていた。