何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
そのことを連絡しようと思ったけれど、私は2人の下の名前以外何も知らないことにその時気づき、伝えることが出来なかった。

登校前に2人がいないかあの公園を何度も覗いたけれど、二人の姿を見ることはなかった。


「うん……あの、トラ子は無事に引き取り手が見つかったの。言おうと思ったんだけど、2人に会えなくて……ごめんね」

「いや、俺達も桜に最後に会って以来、あの公園にはほとんど行ってないんだ。ーートラ子のことは気になってんだけど。まあ、誰かに飼ってもらったんならよかった」


公園に行っていない? あんなに楽しそうに、実くんは遊んでいたというのに。

そういえば、7月に会った時も「母親が入院している」と渉くんは言っていた。既にそれから2が月近く経つ。彼の母親は、重い病気なのだろうか。


「二人のお母さん……入院長いね。だ、大丈夫?」


尋ねづらい話題なので、私は言葉を選んで恐る恐る問う。すると渉くんは、実くんを遠い目で見つめながら低い声で答えた。


「まあ……今すぐ死ぬ、とかそういうんではないから」


その言葉に、少しだけ不安が解消される。実くんはまだ4歳だ。お母さんがいなくなってしまうなんて、悲しすぎるから。
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