何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
しかし、「今すぐ死ぬ」わけじゃなかったとしても、2ヶ月の入院は決して楽観できる状態じゃないだろう。

悠だって、命の危機はないけれど、今の状態は私にとってみればただ事ではない。

ーー早く元の悠に。一刻も早く、私の思い出を取り戻した悠に……戻って欲しかった。


「桜は? なんかあったのか。さっき、元気なさそうに見えたけど」


ぶっきらぼうな渉くんにしては、穏やかな口調だった。私のことを心配して気遣ってくれているのがわかる。


「ーー友達が事故にあって入院しちゃって」

「え。大丈夫なのか?」

「うん、命に別状はないし、元気だよ。ーーただ、いきなりのことだったからびっくりしちゃってさー、あはは。それで元気ないように見えちゃったのかな」


一瞬、渉くんに全部胸の内をぶちまけて、この悲しみを慰めてもらおうかとも思った。

だけど、彼だって母親が入院しているし、幼い弟の面倒だってみなきゃならない。私の重い現状を話したところで、迷惑でしかないだろう。

だから私は笑みを作って、元気な口調で当たり障りのない説明をしたのだった。

ーーしかし。


「ーー本当に?」
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