何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
「ーー確かに結構はえーよな、桜」


すでに私に捕まえられて、木陰で小休憩している渉くんが言う。

私たちがやる鬼ごっこのルールは、鬼になった1人が他の2人を捕まえたら、鬼が交代するというもの。

ーーっていうか、渉くん男の子なんだし、本気出せば私より早いはずだよね……? 体も大きいし……。

まあ、彼が本気を出したら私は永遠に捕まえられないと思うので、程よく手を抜いてくれていたのだろう。


「つっかまえたー!」

「きゃー!」


実くんに後ろから抱きつく形で捕獲すると、彼は私の腕の中で楽しそうに身をよじらせる。

しかし全速力で走っていたようで、ぜーぜーと荒く息をしていた。


「も、もうー、おねーちゃんはやいんだもーん。はあはあ……。つ、つかれちゃったあ、ぼく……」


そして膝に両手を置いて息を整えながら、口をとがらせて言う。私は苦笑を浮かべた。


「ふふ、ごめんねー。でもそういうルールだもーん」

「なんだよぉー。ぼくみずのんでくる!」


そう言うと、実くんは中庭に設置されている水飲み場の方へと小走りで向かった。一瞬前まで呼吸が乱れていたのに、子供の回復力はすごい。
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