何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
ーー花には罪はないのだから。いや、花だけじゃない。……あの子にだって。

窓の外を見ると、相変わらずあの子の姿が見えた。楽しそうに何かを叫び、小さな男の子を追いかけている。鬼ごっこにでも興じているようだった。

活き活きとした笑顔を浮かべて、中庭ではしゃぎ回るあの子。見ているうちに、自然と涙が零れてきた。

ーーどうして。どうしてこんなことになってしまったんだろう。

どうして、よりによって俺が、こんなことに。

自分の運命を呪う俺。涙がとめどなく溢れ出てくる。もうすぐ美香が来る時間になってしまうから、泣いた形跡を残してはいけないのに。

あいつは大袈裟に心配して、面倒なことになりそうだから。

だけどしばらくの間、涙は止まってくれなかった。ーー窓の外のあの子の姿が見える度に、どんどん滴り落ちてく。

窓に背を向け、外の世界をシャットダウンして数分後、ようやく落涙は止まった。
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