何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
なんで神様はこんなことをする? 実くんが一体何をしたというのだろう。こんなの、酷すぎる。

私はただ彼を抱きしめて頭を撫でて、少しの温もりを与えることしか出来ない。彼のお母さんの代わりになんて、決してなれないのだから。

ーーと、思ったのだけれど。


「おね、ちゃんがっ! ぼ、ぼくのほんとうのっ、おねえちゃんだったらぁ……い、のに!」

「ーーえ?」


実くんに泣きながら思ってもみないことを言われ、虚を突かれる私。

彼は私の腕の中で顔を上げ、私を泣き腫らした目で見つめた。


「おねえちゃんはっ! おかーさんに、にてるのぉ……! おねえ、ちゃんがい、いてくれればっ。ぼ、ぼくおかあさんがおきてるの、まてるっ」

「え……」


ーーそうなの? 私がいれば、実くんの悲しみが和らぐの……?

決して彼のお母さんに私が似ているとはやっぱり思えないけれど、彼がそう言うのなら、似ている要素があるのだろう。

実くんはその後しばらく号泣していたけれど、そのうち泣き疲れたのか、私の膝の上で眠ってしまった。

すると実くんの声が止んだことに気づいたらしい渉くんが、病室に入ってきた。


「ーーごめん、迷惑かけて」
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