何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
「俺は桜のそういうところに惹かれたんだ。ここで俺の方にあっさり来るようなら、きっと俺は桜を好きになってない。ーーなんだか、矛盾してる気がするけど」

「ーーほんとだね」


私は小さく笑った。

ーー私のことを、そこまで見つめてくれていたなんて。

単純に、嬉しかった。


「今までのように、友人として仲良くして欲しい。ーー実にも」

「もちろんだよっ……!」


私は食い気味に言った。渉くんのことも実くんのことも、私は大好きだ。私にとって、すでにかけがえのない大切な人になっている。

ーーもちろん、悠に対しての「好き」とは異なるものだけれど。

すると渉くんは、柔らかく微笑んだ。


「よかった。ーー桜の恋人の記憶が戻るように、祈ってるよ」

「ありがとう。私も、2人のお母さんが1日でも早く目覚めますようにって、思ってる」


私と渉くん。2人の祈りが交差した。

ーーきっと、叶う日が来る。私たちの大切な人が、目覚めてくれる日が。
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