何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
確かに夏休み前のテストはそこそこ高得点は取れたけど、あれは1学期友達がいなくてやることがなくて、暇だから勉強をしていただけだからである。なんて寂しい青春。


「とにかくっ。追試になったら面倒なんだから、最低限の要点だけ覚えよ、桜」

「私が線引いたとこだけ覚えれば多分大丈夫っしょー」


二人はそう言うと、私のノートにポイントをまとめてくれたり教科書の要点を目立つように色をつけたりし始めた。


「うう、ありがとう二人とも」


悠の記憶のことなんて、2人には全く関係ないのに。それに2人だって、テスト前は自分の勉強をしたいはずなのに。

2人の優しい友情に、私は思わずジーンとしてしまった。

そんな2人の気遣いを無駄にしちゃいかんと、さすがに私はすでに加奈ちゃんが線を引き終えていた日本史の教科書を、ふむふむと眺めだした。

その後、作業を一段落させた私たちは、飲み物をすすりながら小休憩を取った。ーーすると。


「あ! 何この指輪! かわいいー!」


私の薬指にはまっている、ガラスドームの桜の指輪を見て、詩織が目を輝かせた。


「おっ。ほんとだー! 桜っちの名前にぴったりのやつー!」


すると加奈ちゃんも指輪に顔を近づけて指輪をマジマジと眺め出した。

そういえば、2人にこの指輪をちゃんと見せるのは初めてだった気がする。ーー悠との約束の証を。
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