何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
魔法が解ける頃
部屋の隅の日が当たらない場所で、乾燥させていた一輪のプリザーブドフラワー。それを小さな透明の袋に入れて、私はバッグへとしまう。

何年も前に詩織に教わった、プリザーブドフラワーの作り方は、もう頭のなかに完璧にインプットされていた。

もう7年もの間、毎日のように作成しているから、当たり前だよね。

今日は土曜日。平日は仕事のあと、土日祝日は面会時間の始まる9時に、私は悠に会いに行く。

まあ、さすがに社会人ともなると、残業や用事などで行けない日もあったけれど。

身支度をほとんど済ませた私の足元に、トラ子が擦り寄ってきた。近くの本棚には、そんなトラ子によく似た猫のぬいぐるみが飾られている。

ーー悠が眠る直前に、私にプレゼントしてくれた夏祭りの射撃の景品の猫のぬいぐるみ。見る度に暖かく、切ない気持ちにさせられる。

ぬいぐるみはまん丸としていて、シュッとしたいた子猫の頃のトラ子とはだいぶ違っていたと思う。

でも、最近中年太りしてしまったトラ子は、パッと見どっちがぬいぐるみなのかわからないほどに丸っとしている。

お私はそのもったりとしたお腹を見て、苦笑い。


「あんた、また太った?」


トラ子ももう7歳半。猫でいうと、中年真っ只中の年齢なので、もう決して若くない。
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