何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
「ーー悠、私だよ……! 桜!」


すでに涙でぐしゃぐしゃになった顔で、必死に彼にそう告げる。ーーすると。


「トラ子……は?」


掠れた声で聞き取りづらかったけれど、彼は確かにそう言った。

ーー私より猫のことかい、と一瞬呆れた。でも、私は悠が眠っている間、トラ子のことばかり話していたことを思い出す。

聞こえていたんだ、私の話。だから、最初にトラ子のことを聞いたんだね。

心の底から嬉しくなった。


「トラ子は元気だよ」


私がそう言うと、悠の口角が少しだけ上がった。安心して、微笑んだように見えた。

私は嬉しさを全開にし、満面の笑みをうかべる。ーーそして。

彼にそっと、7年ぶりの口付けをして、こう言った。


「ーーおかえり、悠」
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