何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。



次の日学校へ行き、教室に入ると、扉近くで友人と談笑している横田さんと鉢合わせした。


「あ……」


昨日、彼女とは少し仲良くなれた気がしたけど、他の友達(たぶん私を怖がっている人達)と一緒だったので、挨拶に躊躇してしまった。

ーーすると。


「おはよー! 折原さん」


私のそんな様子には気づかなかったようで、横田さんは満面の笑みで挨拶してくれた。


「あ……おはよ」


私ははにかみながら、笑みを作って挨拶を返す。笑顔がぎこちなくなってしまった気がした。

横田さんは笑みを浮かべたまま頷くと、友人達と話の続きを始めた。私はそれをすり抜けるように、自分の席へと向かう。


「……詩織。折原さんと仲いいの? あの人ちょっと、怖くない?」


すれ違いざま、友人に横田さんが小声でそう尋ねられていた。私に聞こえてないと思っているようだが、残念ながら聞こえてしまっている。


「……と、思ったあなた。損してるよ。折原さんはめっちゃくっちゃいい人です!」


すると、間髪を入れずに横田さんがこう答えた。ーー答えてくれた。

嬉しくて、顔が綻びそうになってしまう。でも一人でニヤけているところを見られたら、変な奴のレッテルを貼られること間違いなし。私は唇を噛んで堪えた。

席に着くと、今日は既に中井くんがいた。昨日に引き続き、珍しい光景だ。
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