何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
私のことを、もうそういう奴だと思ってくれているのかもしれない。そうだったら、ありがたいなあ。


「まあ、友達に当たってみるし、親父のことももうちょっと説得してみるからさ。俺もトラ子飼いたいしね」

「ーーありがとう」


今度は微笑んで、お礼が言えた。人見知りの私だが、中井くんと話すのは、他の人よりも少し楽になった気がする。

昨日悩みを共有できたおかげかもしれない。


「お安いご用っすよー。ってか、トラ子の里親、俺も早く見つかってほしいし」


中井くんが無邪気に微笑んで、軽い口調で言った。自分がそうしたいから、そうしている。私が重く捉えないように、そう言っている気がした。

そして彼の大きな瞳が、私を捕えながらそんなことを言うもんだから。

一瞬胸が高鳴った。

ーーうわ。何だこれ。何私、ときめいているんだろう。

嫌な想像がよぎったけれど、一般的に見てイケメンの部類に入る中井くんに見つめられたら、恋心なんてなかったとしても、誰でもドキドキしてしまうのではないだろうか。

うん、きっとそうだ。

私は半ば無理やり、自分をそう納得させた。
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