何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。


「わ、やった。ゴロゴロ言って寝っ転がったよ」

「ね、猫は首の下と尻尾の付け根を撫でられるのが好きなんだよ」


7月に入り、まだ梅雨は明けていなかったけれど、だんだんと蒸し暑くなってきていた。

トラ子が住処にしている公園には、ちょっとした林がある。梅雨の晴れ間である今日は、その木々達からみずみずしい空気が流れてきていた。

ーー中井くんと初めて公園で出会ってから数日。

彼は放課後、猫用のおやつを持って私と一緒に公園へ通ってくれていた。

もちろん毎日ではなかったけれど。友達が多いようだし、他にも色々約束があるのだろう。

それにしても、人気者の彼がよくこんな地味なことに付き合ってくれるよなあと思う。あ、単純に猫が好きだからかな。


「折原さん、だいぶ猫の扱い慣れたねー」

「うん、中井くんが教えてくれたから」


尻尾やお腹を触るのはご法度。撫でるなら背中や首筋。尻尾の付け根は特に喜ぶことが多い。

猫に詳しい中井くん直伝のお触りポイントを守っていたら、前はご飯を食べるだけで素っ気なかったトラ子が、ゴロゴロと喉を鳴らしたり、お腹を見せて転がってくるようになってくれた。

それでも、気まぐれなトラ子は突然ぷいっとそっぽ向いて、離れてしまうこともあるけどね。

それはそれで、掴みどこがなくて、なんとも魅力的だった。


「かわいいなあ……」
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