何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
トラ子と遊ぶ実くんを眺めながら言った渉くんの言葉の意味がわからず、私は首を傾げる。
「いや、だってさ。桜がこいつにご飯あげてなければ、今頃生きてないかもしれないよ。ーーっていうか、たぶん死んでるって。こんな小さいやつ」
「そ、そうかなあ……?」
「うん。毎日来て子猫の面倒みるとか。なかなかできないって」
淡々と真顔で喋る渉くん。端から見ると不機嫌そうに少し見える。
しかし、彼は無意味な愛想を振りまくタイプじゃないので、これは至って平常モードなのだ。
彼らと知り合ってしばらく経つ私は、もう慣れていた。
ーー人と話すのが得意じゃない私に、よく似ている気がする。
渉くんも実くんも、実は金に近い髪の色に、ブルーの瞳をしている。
彼らのお母さんがドイツ人と日本人のハーフで、二人ともいわゆるクォーターなのである。
二人とも顔が小さく、彫りの深いやたらと整った顔立ちをしている。
ーーまあ、その点はぼっちの私とは違って、黙っていても女の子が寄ってくるのだろうけれど。
それでそういうわけか、彼らは私の変わった見た目に対して、特に何も思っていないようだった。