何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
ちなみに渉くんとは通っている学校も違う。この公園で、私がトラ子の世話をしている時に、会うか、会わないか。そんな稀有な関係だった。
ーー見た目のことも気にされず、学校での私の立場も知らない、気軽に話してくれる2人。
私はこの公園で渉くんと実くんに会えることに、かなりの癒しを感じている。
渉くんはトラ子の近くまで歩み寄ると、かがんでトラ子の顔に向けて人差し指を突き出した。トラ子はそれに向かって鼻をひくひくさせる。
「ーーお前も頑張ってでかくなれよ」
「でかくなれよーっ!」
少しだけ微笑んで言った渉くんの言葉を、実くんが真似る。優しく仲のいい、眉目秀麗な兄弟。
なんかよく考えたら私、このふたり仲良くなれたのってすごくラッキーなんじゃない? ……ってか、いろんな女の子に恨まれそう。
渉くんが腕時計で時刻を確かめると、トラ子を相変わらずモフっている実くんにこう言った。
「あ、そろそろ幼稚園の開門時間だな。行くぞ、実」
「えー! ぼくもっと遊びたいのにー!」
「ダメだ、遅刻する。明日もまた来ればいいだろ」
「ちぇー、おにーちゃんけちー。わかったよー」