何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
駄々をこねかけた実くんだったけれど、口を尖らせて渋々了承した。ーーなんてかわいらしい。


「それじゃ俺たち行くから。桜も学校遅れないようにな」

「うん、ありがとう」

「おねーちゃーん! トラ子ー! ばいばーい! またね!」

「うん、またね! 渉くん、実くん」

「うん、また」


そんなやり取りを私とすると、2人は踵を返して公園をあとにした。

私は足元で寝そべっているトラ子のお腹を撫で回して、ぼんやりと公園の時計を眺めた。

ーーはっ。いかんいかん。私もそろそろ学校に行かなくちゃならない時間だ。

私はごはん入れに使った紙皿を回収し、トラ子に「じゃあね」と言うと、急ぎ足で学校へと向かった。

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