何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
振り返った時に見えた中井くんは、どこか緊張している面持ちをしていた。


「ど、どうしたの?」

「前にさ、『折原さんのストーカーだったら、どうする? 』って聞いたことがあったじゃん?」


確か、トラ子がいる公園で中井くんと初めて会った時に言われた言葉だ。


「ーーうん」

「あれさ、本当なんだ」

「え……?」


中井くんがストーカー? 私の?

彼の言うとおり、本当にそうだとしたらなかなか物騒な話だが、なぜか全然恐怖は感じなかった。

なんで中井くんが、私のストーカーなんてするの? そんな純粋な疑問しか、私には生まれなかった。


「実はね、初めて公園で話し掛ける前から、折原さんが猫の世話をしているのを俺見てたんだ。家の近くだから、偶然見かけちゃって」

「えっ!?」


全然気づかなかった。あの公園、遊具もほとんどなくて子供たちもあまり遊んでいないから、いつも自分しかいなかったのだけれど。

だから私、トラ子に会う度に、たくさん話しかけていたんだけど……。

中井くんが私に話しかけてくれた時も、トラ子と話していたのは見られてしまっていたけれど、それ以前から「今日さー、学校でさー」とか言っていたのも聞かれていたということなんだろうか。

まるで人間に世間話するかのように話していたんだけれど……。改めて考えると、私ちょっとおかしい奴じゃない?
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