何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
「い、いつ頃から!?」

「んー、4月の下旬くらいかなあ」

「えええ!」


そんなに前から……。これは、トラ子と会話(一方的に話しかけているだけだけど)している姿をばっちり見られているに違いなかった。

そういえば、動物病院で中井くんが「ずっと見てればわかるって」と言っていたのを今思い出した。

つまり、私とトラ子の触れ合いを実は2ヶ月以上も見ていた中井くんは、私の想いを知っていたということか。

ーーだけど、それにしても。


「な、なんで黙って見てるの。話しかけてくれたくれればいいのに……。あ、やっぱり私か怖くて、ビビってた?」


言っている途中でむなしくなってくる私。クラス中にビビられている私を、中井くんも最初はきっと恐れていたに違いない。

「怖くないよ」って言っていた頃にはすでに、隣の席での様子や、猫に話しかけている私を見ていたはすだから、きっと怖さが軽減されていたんだろうと思う。


「俺は折原さんが怖いだなんて思ったことないですけど」


しかし中井くんは、まったく想像していなかったことを言った。はっきりと。私をじっと見て。


「1人が好きなのかな、とは思ってたけどさ。俺にとって折原さんは怖さゼロ。初めて見た時からね。なんでみんな怖がってたのか、マジわかんない」

「ほ、本当に……?」
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