何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
最初から、私を怖がっていない人がいるなんて。信じられなかった。

中井くんは、見た目だけで人を判断する人じゃないってことなのかな。

だけど、それならどうしてーー。


「じゃあ、なんで公園でなかなか話しかけてくれなかったの?」


私が尋ねると、中井くんはなぜか私から少し目を逸らした。

そして少し後、外していた視線をまっすぐと私の瞳に重ねた。


「ーー怖いっていうのと、逆」

「どういうこと……?」

「最初は孤独が好きな、かっこいい人なのかなって思ってた。でも偶然公園で、トラ子に話しかけるのを見て。本当は引っ込み思案で優しい子なんだなって思った。トラ子と一緒にいるときの折原さんは、教室で見る時と全然違ってたから、なんとなく話しかけるタイミングがなかったんだよね。ーーそれでそんな折原さんを見ているうちに」


中井くんはそこまで言うと、いったん深く息をついた。そして意を決した様な顔をした。


「好きになってたんだ。折原さんのこと」


ーー一瞬、私の時間が止まった。

中井くんの言葉が、あまりにも信じられなくて。まったく予想もしていなかったことで。

だって、いつも人に囲まれていて、他の女の子とも仲の良さそうによく話していて、かっこよくて人気者の中井くんが。
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