何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
私みたいな、ほぼボッチの見た目が怖い女の子を。

ーー好きだなんて。


「俺の彼女になってください」


気持ちが追いついていない私に、中井くんはとどめをさした。

すると私の両目から、涙がこぼれ落ちた。自分でも涙が瞳に溜まっていたことには、そうなるまで気づかなかった。


「ーーいきなりだねえ」


泣きながら言うと、中井くんはひどく慌てふためいたようだった。


「泣くほど嫌だった!? ご、ごめん! いきなりで!」


そして焦った声で彼は言う。私は涙を拭いながら、必死にぶんぶんと首を横に振る。

涙の雫は温かかった。頬を伝うそれに、私は心地良さすら覚えた。


「こ、これは嬉し涙……ってやつ……です……!」


私は涙声でそう言った。あわあわしていた中井くんの動きがぴたりと止まる。


「ーーそれって。つまり……」

「びっくりして……泣いちゃったみたい。嬉しすぎて泣くなんて……初めてだよ、すごい経験」

「OKってことで……よろしいんでしょうか……?」


私は泣きながらも、微笑んで深く頷いた。


「よっしゃああ! 来たー! ありがとう! 折原さん!」


喜びを叫ぶ中井くんが、私に抱きついてきた。突然のことに私は全身を硬直させる。

中井くんの匂いが、温もりが私を包み込んできて。当たり前だけど、パーカーを着た時に感じたものの、何倍もリアルな感触で。
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