何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
ガラスの中の桜の約束
トラ子は数日入院したあと、結局中井家が引き取ってくれることになった。

トラ子の入院費も工面してくれた中井くんのお父さんが、とうとう折れてくれたらしい。

中井くんが言うには、まあ入院がなくても飼ってくれるのは時間の問題だったとのことだけど。

そして私たちが彼氏と彼女と言う関係になって、二週間が経った。

明日からは、待ちに待った夏休みだ。


「あっついなー」


容赦なく熱光線を浴びせる太陽の光を、手をかざして遮りながら中井くんが言う。

梅雨が明けて夏も本番。数日前から猛暑日が続き、このうだるような暑さにはかなり活力を削がれている気がする。


「そうだね。ーーはい、これ」


ついさっきコンビニで買った、昔ながらのコーヒー味のアイス。ひと袋に2本入っているので、コスパ重視の高校生とっては、優良な商品だ。

1本を中井くんに渡すと、彼は「さんきゅー」と笑顔で受け取る。

そしてアイスの冷たさを食べる前に堪能したいのか、頬に当てて「つめてー」と喜んだ。

中井くんと今の関係になってからは、一緒に帰ることが日課になっていた。

まあ、一緒に帰ると言っても、学校から数分で着いてしまう最寄り駅まで行くだけだったけれど。電車通学の私のために、中井くんは毎日駅まで一緒に居てくれるのだった。
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